投資信託のキーワードとも言える「ノーロード」と「インデックス」。
どちらもちゃんとした意味があり、これを知ると知らないとでは、実績リターンに大きな差が出てしまいます。
「投資を始める前に、知っておけば良かった……」と後悔しない為にも、しっかりとみんなで把握していきましょう。
購入時の手数料がかからないノーロードファンド
「ノーロードファンド」とは、投資信託を購入する時の手数料(申込み手数料)がゼロのファンドの事を言います。
この「ノーロードファンド」が優れているのは、例えば1万円の積立て投資を実践した時に、1万円の掛金でまるまる投資信託が購入できる点です。
具体的な例を挙げてみると…
ファンドを買う時に2.1%の申込み手数料がかかってしまうと、1万円の掛金のうち、実際に投資信託を買い付けるのは9790円になってしまいます。
この場合は、1万円の投資元本で投資を行ったとしても、最初からマイナス2.1%のハンディを背負って、運用をスタートさせる事になるのです。
ただ、ノーロードファンドだからといって、ファンド販売会社の収益がなくなるわけではありません。
販売会社は「信託報酬」と呼ばれる収益の一部を、継続的に受け取っているからなのです。
市場そのものを買うインデックスファンド
「インデックスファンド」とは、市場の平均値と同じ値動きになる事を目指す、シンプルで低コストな投資信託の事です。
現在では、多くの銀行や証券会社で、複数のインデックスファンドがラインナップされています。
ここで投資信託の「運用スタイル」について、しっかり理解しておきましょう。
投資信託は、大きく2種類のファンドに分ける事ができます。
1つがインデックスファンド、もう1つはアクティブファンドです。
「アクティブファンド」は、運用会社が自らの意図で銘柄の売り買いを行っていき、市場の平均値を上回る収益を目指して運用を行います。
一言で言うと「ロマン」のある運用手法ですね。
一方の「インデックスファンド」は市場そのものを保有して、銘柄の売り買いは原則行いません。
一言で言うと、「現実的」な運用法ですね。
どのような投資信託も、必ずインデックスファンドかアクティブファンドに該当します。
運用目的 → 市場の平均値を上回る
銘柄の売買 → する
運用目的 → 市場の平均値と同じ
銘柄の売買 → しない
継続コスト → 低い
実は、このインデックスファンドとアクティブファンドは、投資に対するポリシーや運用哲学が全く異なるのです。
ロマンを求めるアクティブファンドは、銘柄の選別を行う為に、銘柄についてリサーチを行う必要があります。
また、銘柄を売買すれば、当然「手数料」がかかってきます。
結果、ファンドを維持する為のコストがどうしても高くなるのです。
一方、インデックスファンドは市場の平均値を保有するだけです。
銘柄を選んだり、売り買いを行なったりしませんから、ファンドの維持コストが低くなります。
シンプルに言うと、インデックスファンドとアクティブファンドの間では、この「継続コスト」が大きく違ってくるのです。
私達が投資信託を保有する限り、継続的にかかってくるコストの事を「信託報酬」と呼んでいるのです。
信託報酬は、私達が保有するファンドの時価に対して、年率◯%という形でかかってきます。
これはファンドを保有する限り支払い続けるコストなので、私達の収益に大きな影響を及ぼします。
例えば、名目上8%の収益を上げている投資信託であっても、年1.5%の信託報酬がかかれば、あなたの実績リターンは6.5%になってしまうのです。
コストの違いで、これだけの「差」が出る⁉︎
先ほど紹介した「ノーロードファンド」を思い出してみましょう。
「ノーロードファンド」とは、投資信託を購入する時の「申込み手数料」がゼロになるファンドの事でしたね。
この申込み手数料は、購入する時に1回限りでかかってくる手数料です。
投資信託に関する手数料には、大きく分けて2種類あります。
一時的なコスト → 申込み手数料
もし、信託報酬が年1.5%、申込み手数料が2.1%かかるファンドを買ったとしましょう。
このファンドを1年間だけ保有したとしたら、トータルコストは年3.6%になります。
これは言い方を換えると、ファンドが1年間にプラス3.6%の名目リターンを上げて、ようやく私達の実績リターンがゼロになるという計算です。
ただし、申込み手数料のコスト比率は、ファンドを長く保有すればするほど、低くなっていきます。
投資を行う上で、いくら儲かるのかは残念ながら決まっていません。
しかし、いくらコストがかかるのかは「確定事項」です。
投資においては、コストをいかに抑えるかが死活問題になるのです。
例えば、「インデックスファンド&ノーロード」「インデックスファンド&申込み手数料」「アクティブファンド&ノーロード」それぞれのパターンで10年間運用を行ったとしましょう。
前提の条件として、インデックスファンド、アクティブファンドとも「収益力は同じ」で、年率10%の名目リターンを上げる事ができるとします。
「インデックスファンド&ノーロード」は、申込み手数料がかからないので、コストは信託報酬のみです。
一方、「インデックスファンド&申込み手数料」の場合、申込み手数料がかかってしまい、10年間運用を続けると、1年あたりのコスト比率も高くなってしまいます。
そして「アクティブファンド&ノーロード」の場合は、年間コストが1番かかってしまいます。
結果的にみると、「インデックスファンド&ノーロード」のパターンが1番実績リターンが高くなります。
また、長期的にみると、申込み手数料よりも信託報酬の差が、実績リターンに大きな影響を与える事になるのです。
過去の長期リターンからみても、多くのアクティブファンドはインデックスファンドを下回る成績しか残せていません。
もし、「アクティブファンド&申込み手数料」という選択肢があれば、10年間運用を続けた場合の年間コストは、他のどれよりも1番かかってしまうのです。
つまり、投資信託の潜在収益力に大きな差がないとすれば、ノーロードできると信託報酬の低いインデックスファンドを選ぶ事が、あなたのリターンを最も高めてくれる「戦略」となります。
まさに、このような絞り込みこそが、前回紹介した「3000分の60」の考え方なのです。
今では日本株式をはじめ、海外株式や日本債券、海外債券や新興国株式など、ほぼ全てのカテゴリーでインデックスファンドが存在しています。
また、ノーロードファンドの数も増えてきています。
そしてインデックスファンド&ノーロードである投資信託も出揃ってきています。
つまり、あなたの前には1つの窓口で、積立て投資が可能な、ノーロード型の、インデックスファンドが購入できるインフラが整ってきているのです。
このような環境下で、積立て投資をスタートする事ができるあなたは、本当に恵まれていると言っても過言ではありません。
日本の投資信託について改善すべき課題は多いですが、品揃えの多様性や低コスト化の流れが定着しつつある現状を見れば、日本は立派な「投資信託先進国」だと言えますね。
まとめ
投資信託には「購入時の手数料がかからないノーロードファンド」、「市場そのものを買うインデックスファンド」があります。
どちらにも利点があり、組み合わせ次第で、実績リターンを高める事も可能です。
もし、投資信託の潜在収益力に大きな差がなければ、ノーロードで信託報酬の低いインデックスファンドを選ぶ事ができれば、実績リターンを最も高めてくれる「戦略」になりますよ。
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